てきちゃん漂流日記

サイキック寿司屋

振り返ると誰もいない

もう職場はえらいこっちゃである。

 

ヘッドギアを装着し、思念で寿司を握るテストパイロットとして集められた僕たち。早いもので来週から実戦投入となる。私が入社した昨年10月頃はみんなへらへらしていたものの、徐々にXデーが近づいていくと、昼休みに黙々と仕事したり、こっそり休日に出勤してやろうかと言い出す人もいる。今日は、3月入社の新入社員たちが残業するぞと言い始めて結構な時間残るらしい。

 

それはさておき、今日の僕は定時で帰り、家でいいちこをぐびぐび飲んでいる。なんだかよくわからないけど、自分のパートはいけそうな気がしている。僕は2つのチームを担当しているけれど、どちらも締切にある程度のゆとりがあり、考える時間が与えられている。スピードよりもロジック重視で、他チームのように急かされることは繁忙期以外あまりない。この半年で基本となる手順はだいたい頭に叩き込んだ。イレギュラーがあっても、手にした時間でじっくり考えればいい。たぶんなんとかなる。

 

と思っているが、とても心配なことが1つある。僕以外この業務を今ひとつ理解できていないという点である。要は、軍艦巻きの本質を知っているのは僕しかいない。好きなタイミングでふらっと休めない。僕が交通事故に遭ったらもう終わり。

障害者雇用で入社したのだが、ここまで訳のわからない業務を任されるとは思っていなかった。正直、これを理解できる弟子は今後現れないのではと思う。10年後も軍艦巻きを作り続けていそうな気がする。

 

もう本当に困ったなあという時期なので、ちゃんと薬を飲むよう心がけている。酒を飲んで薬をサボったりしがちだったけど、ちゃんと薬を飲む。すると、朝目覚めると心は穏やかで、効いてるなあという実感はある。やっぱ効くでこれは。

 

そんな3月最終週でどうしたもんかなあと思いながら、ひっちゃかめっちゃかなオフィスの片隅で、淡々とディスプレイとにらめっこしている。